【ＨＯ２：嘯（うそぶ）く俗】

「……えっと、チャオ？」
「わたし？わたし……アニー。ただのアニーだよ」
「どうしてこんな場所に、って？ええとね、まってるの。ここでまってろって、いわれたから」
「…………え？くれるの？」
「えへ……ありがとう」

・・・・

　12～15歳程に見える女の子。あだ名は『アニー』。
　地中海の太陽に照らされたかすかに浅黒い肌と、漆喰のようなセミロングの銀髪、焼け落ちたろうそくのようなグレーの瞳をもつ彼女は、いわゆる『シチリア的』な特徴をもつ少女だ。広い額と大きな瞳、白いワンピースからのぞく細い手足は、まるでガラス細工でできた人形かギリシャ神話の妖精のようである。その幼く儚げな容姿は、見る者の庇護欲を否応なくかき立てるだろう。
　しかし彼女はいわゆる『ファムファタール』と呼ばれる人物である。彼女の魔性に吸い寄せられ虜になった人間には、少なからず破滅の運命が待っている。

・・・・

「ね、おねえさん。おねがいがあるの」
「わたし、あそこの骨董やにあずけられてるの。それで……」
「いっつも、ひどいことされて……」
「ね……おねえさん。たすけて、ほしいの」

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